感染症と免疫についてのお話です。
今回の感染の波はこれまでになくとても大きいものとなっています。
感染者数は若干ゆるやかに減少傾向を見せ始めている地域もありますが、現状はまだ先が見通せない状況です。
当院でもできるだけ患者さんの滞在時間を短縮できるような対策をとって診療にあたっています。
コロナに限らず、感染症や病気において非常に重要なのは「自己の免疫力」です。
「睡眠を十分とる」「バランスのとれた食事をとる」といったごく基本的なことが免疫力を高めることに異論はありませんが、ここで追加でお話してみたいのは、「笑い」と「漢方薬」です。
「笑い」について。1年以上もコロナと向き合う生活を続けてきて自由な生活を奪われ、日々の生活に笑顔を作る時間は少なくなってしまった方も多いのではないかと思います。そんな中で「笑顔でいましょう」といっても困難なこともあるでしょう。しかし悲観していたり、頭や腰をうなだれて生活していてはこの憎い感染症のおもうつぼです。関西のある医療機関が悪性腫瘍と戦う患者さんに吉本新喜劇の漫才を拝聴していただき、「笑う時間」を増やすことで免疫力が向上し、癌の治療成績が向上する可能性を見出しています。最近の抗がん剤はがん細胞を直接叩くのではなく、自己の免疫に作用して免疫力を賦活化させてその免疫物質ががん細胞をやっつけるという種類のものも多く開発されています(私も勤務医のときはそのような抗がん剤を多くの頭頸部がん患者さんに投与してまいりました)。
このように「笑う」ということは間接的に免疫力に作用し、感染症にかかりにくい体を作り上げることは間違いなさそうです。自粛生活を強いられている中ではありますが大切な人や家族と一緒に少しでも笑顔で過ごせる時間を作っていきたいものです。
次は「漢方薬」についてです。当院に受診されたことのある方で私が漢方薬を処方した方も多いかと存じます。感染症には大きくわけて「細菌感染」と「ウイルス感染」、そして「真菌(カビ)感染」があります。細菌感染には抗生物質は有効ですので私もよく処方します。真菌感染には抗真菌薬を用います。そして一部のウイルス感染については抗ウイルス薬を使用することがありますが、ウイルスに関してはほとんどが有効な薬がありません。RSウイルスやアデノウイルスも薬はありません。新型コロナウイルスも現状は直接ウイルスを叩く抗ウイルス薬はありません。したがってここでやはり重要なのは感染しないための予防策です。そこで私が風邪症状に以前からよく使用するのが「漢方薬」です。「すこしぞくっとする」「節々が痛む」「けだるい」など「風邪症状かな?」といった経験がみなさんにもあるかと思います。このような風邪の引き始めや、風邪になる前の予防として漢方薬をご提案しています。具体的には有名な「葛根湯」、少し症状が強いときには「麻黄湯」、この2種類を使用しています。
ワクチンの普及がしつつありますが、ワクチンだけに頼るのではなく、日々の生活で免疫力向上の工夫や漢方の力も借りて、この時節をみなさんの力を合わせて乗り切っていきましょう。
いながき耳鼻咽喉科
院長 稲垣憲彦